[ようこそ美術館へ]絵のなかへ。

[ようこそ美術館へ]絵のなかへ。…

 「海でね、“電気クラゲ”に刺されて、痛かったんです。とても痛かった」 ある鑑賞者が常設展示の『大礁円環』(1996年)の前でどこか痛がるような顔で話しています。そこで、尋ねてみました。 「そうですか。痛かったんですね。ところで、この『大礁円環』、畳12畳もあるんですよ。海のなかの魚がいっぱい描かれてい... >>続きを読む。

失ったもの。

失ったもの。

 版画は不思議にいろんなことを気づかせてくれる画法です。すべて裏から、つまり反対から取り組んでいくんですね。つまり、頭を逆回転にしなければいけません。 版木では彫った線や面が白になり、彫らなかった線や面が黒になります。また絵の人物などに右を向かせたかったら、左向きに彫らなければなりません。さらに、裏手彩色とい... >>続きを読む。

おんぶ。

おんぶ。

  ちょっと前のことです。「ママと赤ちゃん」ふうのテレビ番組で主婦アドバイザーらしき方が言うには「最近は“おんぶ”をするお母さんが見あたりません。“おんぶ”はママが少し首を横に動かせば、赤ちゃんの顔を見ながら家事をすることもできます。“おんぶ”は赤ちゃんとのコミュニケーションにもなりますよ」というも... >>続きを読む。

夢中になれること。

夢中になれること。…

  少年は岩陰に隠れてもう何時間も砂浜のほうに目をやり、その目的の瞬間を待ち続けています。彼はクラスの誰よりも生き物が大好き。一度ふしぎとおもい合点がいかなければ、その生き物の習性や生態のことをとことん観察しなければ納得しません。  少年にとってその日の納得できないこととは、砂浜のヤドカリもどき足跡。そのカタチは... >>続きを読む。

夕凪。

夕凪。

 所さんの『笑ってこらえて』という人気番組があります。そのコーナーで、ご当地に行って地元のひとに「ここの自慢できるところを教えてください」と声をかけて紹介してもらうのがあります。  そんなノリで「沖縄の自慢できるところを教えてください」と訊かれれば、ぼくは迷わず浦添市の丘の上にある『浦添ゆうどれ』と答えようと思い... >>続きを読む。

梅雨。

梅雨。

 奄美に数日遅れて、沖縄も梅雨に入りました。この梅雨に、私はこれまでとくに関心を示さないで生きてきました。自然に対して敏感に慣れ親しむというところがなく、情緒のない人間なんですね。 ただ、この十数年前から少しだけ情緒のあるひとになりかけています。いまの時期、沖縄は梅雨の初めです。この時期に吹く南風を“黒はえ”... >>続きを読む。

絵のわかるところまで。

絵のわかるところまで。…

「絵がわからない」を毎週のように連呼している私ですが、それでも「絵のわかるところ」というのもきっとあるはずです。きょうは、そのあたりについて話せればとおもいます。なにしろ美術館で働いている私ですから、そこまではコミットすることから逃げられませんよね。 たとえば、去年あたりから日本でもとくに注目され始めているオ... >>続きを読む。

絵のわからなさ。

絵のわからなさ。

ある作品を見て、自由に語るひとがいます。例えば、渡り鳥が飛んでいると、「あれは自由をおうかしているんですね」とか、額いっぱいに描かれた闘鶏が描かれていると、「作者はそこから抜け出したいと心の解放を求めているんです」とか、はたまた数千羽のバッタの群れが空をおおっていると、「一羽一羽の孤独を象徴していますね」とか、... >>続きを読む。

胎内。

胎内。

この文章を読んでいる方で、一度でもボクネン美術館に足を運んでいるひとなら今日の話をいくらか感じてもらえるかも知れません。 ボクネン美術館は外観の大胆な赤瓦屋根のうねりとともに、館内の空間についてもそれぞれの“おもい”が込められました。きょうはその館内について話しましょう。 館内のデザインをしたのは、... >>続きを読む。

沈黙の言葉。

沈黙の言葉。

「色がとても力づよいですね」「絵の細かさにたいへん驚きました」「沖縄ならではの迫力ですね」などが、私たちの誰もが絵を前にして感想を述べるときの言葉です。でも、そう言ったあとになにかスッキリしない言葉の残り感があるのは誰もが経験したことがあるでしょう。 絵画や音楽の感想を述べることは、やさしいようでとても難... >>続きを読む。