[ようこそ美術館へ]“絵”が及ぼす不思議。

「絵のなかにとても“音楽”を感じます。実は私は東北大震災で“住む場所”を失いました。その“場”がなくなったら、“音楽”や“芸能”までが失われたことがよくわかりました。ボクネンさんの絵に、芸能が生まれる“場”が描かれているのをすごく感じたからです」

こう静かな口調で話してくれたのは、仙台生まれの女性。絵から“音楽”が聞こえてくるというのです。

彼女は10年前に初めてボクネン作品を沖縄の空港で見ました。そのとき作品にとても感動して、それから美浜の美術館へ足を伸ばしたんですね。

ところがそのとき以来、彼女はずっと沖縄に来ることがありませんでした。東日本大震災にあったからです。それで、今年ようやく沖縄のボクネン美術館を訪れることができたというのです。

それで久々に作品を見て故郷の“場”がいかに大事であったかを感じさせられたというのです。以前には感じなかった“土地へのありがたさ”に思いを馳せたと言うんですね。

余談ですが、2011年の東日本大震災の被災に遭った方が美術館を訪れて来てくれるのは意外と少なくありません。そのたびにボクネン“絵”が何らかの形で、みなさんの心を癒してくれるという話を何度か聞きました。この不思議な絵の力を、もちろん数式のようには説明できません。ただ人間の奥底には“自然”が限りなく住みついていて、“命”に大きな影響を与えているのではないかということを考えてしまいます。

被災に遭われた方々が“絵”に魅入られ、そのことを熱心に話すのを訊いて、改めて“絵”が及ぼす不思議さに圧倒されてしまうのです。<當山>(掲載作品『野分け道』万象連鎖-10、お話をうかがったのは11月20日の午後でした)