• 2019-10-18 (金) 15:38
  • カテゴリー:ブログ

釣りが大好きなの。

 美術館で仕事をしていると、子どもに絵の感想を訊くのは思わぬ発見や勉強につながります。その日も10歳の女の子に話しかけてみました。

「どう、好きな絵はあった?」

「この絵が好きです」(『水面裂く』2018)

「ああ、水の線がとても綺麗だもんね」

会話のあと、しばらくしてその女の子はわざわざやってきて、こう言いなおすのです。

「ああ、もっと好きな絵がありました。これです」(『潮待』1991、掲載作品参照)

「おお、そうかそうか。なるほど」

そこで女の子の鑑賞力に感心しました。迫力ある海と浜辺に根をおろすガンチョー木やソテツなどを大胆に描いた絵の魅力を見抜いています。絵の構図とバランスの迫力をよく感じ取っています。

すると、その女の子は無邪気な顔でこうも言うのです。

「なぜ、この絵が好きなのか、おじさんわかる?」

絵の魅力の説明までするのかと、恐るべき女の子に少し後ずさり。ところが彼女は、さらにこう続けました。

「私、釣りが大好きなの」

確かに『潮待』作品の右中央に、銛か釣竿みたいなものを持って岩に座っているウミンチュらしき人がいます。子どもは“ひと”が気になり、大人は“理屈”が気になっていたのですね。

女の子は大好きな釣りのことを思い浮かべ、漁師の海に出たい気持ちに寄り添っていたんです。明らかに大人の完敗です。(當山)