投稿日時:2018年12月17日(月) 15:05
[ようこそ美術館へ]展示会の作品から。
開催中の展示会『生命の息吹』から、作品をひとつ紹介しましょう。2000年制作の『茜さす』(47.5×61.5cm)です。ボクネンは2000年から2008年までの頃は「超視線の時代」といっていいほどの画風が多いです。この絵にしても、私たちはどこから見ているのでしょう。そう、人間の目の位置ではないことがはっきりわかります。
言わば、丘から見ているわけでもないし、船から見ているわけでもありません。さらに飛行機から見ているわけでもありません、そうだったとしたらトンボの大群が近すぎてどちらの飛行も到底かないません。強いて言えば、海に電信柱のような長い棒を埋め込み、そのてっぺんまで登ってみないと、この視線は獲得できないはずです。こうなると作家は「神の目線」で見ていることになりますね。
画面いっぱいには暮れなずむ茜色にたくさんのトンボたちが飛んでいます。作家はこの大自然に生きる「小さき昆虫たち」に何かを託しているようにおもえます。
この絵を見ていると、かつて人間が存在せず、他の生き物たちが雄々しく生きていた時代。そんなような壮大な自然も感じさせてくれます。それは人間がいなかった時代も、このような眩しい太陽の色があったことを考えさせてくれます。この絵ではトンボはしっかり、その存在感を示しているのに、人間の存在感は感じられません。
人間はみずから失ってしまった自然感を、これからどれくらい取り戻せるんでしょうか。また自然から貰えるエネルギーをどれくらい獲得できるのでしょうか。その答えは、人間の目を灼きつくさんばかりの「黄金色」が応えているのかも知れません。