投稿日時:2018年08月06日(月) 14:42

美術館はミステリー。

 迷走台風12号の影響でしょうか。湿った風が吹きわたる美浜アメリカンビレッジ。7月の末日、美術館にいらっしゃったのは、リウボウ旅行社が企画する「ミステリー・バスツアー」の22名さま。

このツアー、いつもの自治会や福祉団体と違って個人で申し込みをするため、お互いをよく知りません。ですから、作品の鑑賞中、横の人とおしゃべりをすることもあまりません。それで、けっこう自由なそれぞれの美術館見学ということになりました。

それでも鑑賞には、みなさんご熱心。

「“白龍”(はくりゅう=14〜17世紀に琉球へ来た冊封使たちが本島上空に見つけた一筋に伸びた白い雲が龍に見えたことからこの名がつけられた)は、どれですか?」

と『節気慈風』(せっきじふう)と作品前に置かれた説明書を見比べながら、聞いてくる婦人がいました。

「32ページ(A4用紙)もある説明書には、あまりにも膨大な自然用語が書かれていますから、『節気慈風』の絵のなかに“白龍”は入りきれなかったんでしょうね」

と私。

「そうですか、説明書にある“白龍”を作品のなかで見たかったですね」

となかなか通な鑑賞者。

「それにしても、この作家さん、自然のいろんなことをよく知ってますね」

婦人はますます、『節気慈風』の説明書に目が釘づけです。

「もしかしたらボクネンさんは、神様かも(笑)」

という婦人は作品を見ながらにわかにうれしそう。

ツアーの方々のなかには、小さいころ伊是名に住んでいたという人もおり、島の風景が描かれた作品をゆっくりと懐かしんでいました。

その日のバスツアーは朝からの分刻みのスケジュール。少し疲れぎみの男性が、帰りぎわにふと別れの言葉をかけてくれました。

「このツアーは、一日じゅうどこに行くのか知らされませんでした。まさにミステリーツアー。でも最後にボクネンさんの絵を見ることができて、よかったです」