投稿日時:2013年03月25日(月) 10:31

万想連鎖 27

風の島からファサード2

万想連鎖27 リトルオキナワ
那和  慎二   NAWA Shinji(大阪通信員)
KK27.jpg

 大阪市に転居した。辞令により転居を余儀なくされる転勤族の宿命であるが、個人だけではありえない15度目の転居も、負担以上に楽しみを増幅させることにしている。大阪に旅行しても観光では行かないところまで、そこに住めばこそ行くことができる。かつて沖縄に住んだのも転勤したからだし、だからこそ、沖縄三越でのボクネン個展に迷い込む偶然を得ることができた。転勤に伴う転居は良いことが多い。このたびの大阪も、言わば勤務先が用意してくれた長期の新婚旅行と考えることにした。そして、大阪市へ行ったら、まず大正区を訪ねよう。別に朝の連続テレビ小説に影響されたわけではない。沖縄はすでに遠いところではない。思い立てば明日にもというわけにはいかないが、来週末には那覇空港に立っているだろう。早速、空港でANAラウンジにあるボクネン作品とご対面することもできる。だから、沖縄へ行く代償行為として大正区へ行くのではなく、今現在の大正区にどのような沖縄の風を感じることができるのか、それを確かめてみたいと思った。

 だいぶ暖かくなったとはいえ、まだ冷たい風にボクネンの綿マフラーを首に巻いて出かけた。JR環状線の大正駅から沖縄出身者が多く住む平尾まで歩いたら、それは思った以上に遠く、その距離は、かつて遥か沖縄から本土に移住してきた人たちへの距離を表しているように思われた。せっせと歩いたため、早春から一気に初夏の汗ばみとなり、それは、そこを訪ねるのにふさわしい状況に思えた。大正区は、「純と愛」の舞台であること、沖縄を体感できることをさかんにPRしている。しかし、日常の平尾の街は、とりたてて沖縄・オキナワしているわけではない。大阪市内のどこにでもある商店街とその周辺の住宅街に見えた。沖縄を知っていればこそ、宮城・沢岻・仲順等の文字が目に付いたし、目を凝らして食堂のメニューに沖縄そばを見つけることができた。しかし、今や全国に広がる沖縄料理店の沖縄らしさからすると、ずっと沖縄色は薄い。PRパンフにあった「おきナニワん」の言葉の通り、すでに沖縄と大阪(ナニワ)がチャンプルーというより、溶け合ってしまったのかもしれない。もっと沖縄を感じたくて来たらしい中高年グループの方から「ここがその最も沖縄らしい所ですか?」と聞かれて、思わず申し訳ないような気持ちになってしまったが、今の大正区平尾には、今の平尾の日常があり、期待する目を意識してことさら沖縄らしくすることはないのだと思う。

 かくして、私の首に巻きつくボクネンに気付く人は誰もなく、街でボクネン作品を見かけることもなく、リトルオキナワへの小旅行は終わった。もう少し暑くなったら、ボクネン柄のかりゆしを着て、大正区へ行こう。沖縄らしさを期待する人に、沖縄の風を少しでも感じてもらえたら幸いだ。