投稿日時:2019年04月15日(月) 16:39
[ようこそ美術館へ]ダーツの達人。
4月も中日の15日。朝の天気予報以上に上昇しているような気がしました。23℃はあるでしょうか。まあここは沖縄、今日は半袖か長袖かというのは、午後あるいは夕方になってしかわかりません。そんなことはよくあることです…。
お昼も近くなった頃、私の友人3人組が美術館を訪ねてくれました。例によって、私は「なるほど」をその客たちが帰るまで何回かつぶやくことになります。
その3人組の一人Oさんですが、一等最初、作品『春の小道』(1997年)の前に立ち、まるで近眼のひとのように絵の数センチ前に目を近づけ、ビクとも動きません。紙や染料の素材でも確かめているように。
それからOさんは、『藤生沢垂桜』(1997年)の前にたちこう言いだしたのでした。
「ふむ、この作品を見ていると、二重にも三重にも絵が重なっているような気がします。不思議な絵ですね」
ときました。私は「あなたこそ不思議じゃないですか?」と言いたかったのですが…。
そして、常設展示の『大礁円環』(1996年)の前に立つと今度はこう言うのです。
「近くの絵ははっきり見え、その中間はそれなりにややはっきり見え、そして奥の方はやや黒くぼやけて見えます。でもその奥のぼやけた方が像はイメージしやすいですね」
私がこのOさんに戸惑わないはずはありません。このひとの絵の見方は、ひとつの作品のなかにいくそうもの衝立のような「次元」が見えているらしいのです。
私は、また新たな絵の鑑賞者が出てきたと興味を覚えないわけにはいきませんでした。
つまりOさんは絵を1枚として見るのではなく、何枚も重なった「絵の次元」を出現させているのです。
私はこの不思議な鑑賞者に新たな貴重種でも発見したように、今までにない興奮を覚えながら3人を見送りました。
そしてふと、思いつくことがあったのです。
「そういえば、Oさんはダーツの達人だった」。
<當山>