[ようこそ美術館へ]世界レベルの作品。

 数年前の話である。ハワイ大学と沖縄本島北部某大学の大学教授がおふたり、美術館を訪れた。ぼくは北部某大学の先生と知り合いだったので、彼がその友人を連れ立ってきてくれたのである。

しばらく館内を歩き回り、北部某大学の先生があるボクネン作品の前で立ち止まり、こう言った。

「ふむ、これは世界レベルの作品だね」

そういうと彼は絵を見つめながらクスクスと笑い、しばらくその場で佇んだ。

するとハワイ大学の先生もそばまで寄ってきて、ぼくの友人先生と並ぶとやはり笑ったのである。もちろん彼も、その作品をかなり気に入ったようであった。

それからそのハワイ大学の先生、この作品をどうしても買いたいと言い出したのである。それにはハワイの奥さんに了解を得なければならないからと、すぐに国際電話をした。あいにく、奥さんとは連絡がつかなくて、その日は作品購入をあきらめた。でも今度来るときにその絵を必ず購入するからと約束し、美術館をあとにした。

さてその作品である。ボクネンが2006年に制作した『よからぬ相談』(掲載作品参照)がそれである。

確かにこの作品は、ボクネンにしては珍しい作風である。四匹の野良犬が月夜の下で何かを企むための相談をしているような絵なのだ。ボクネン作品といえば、壮大な海、奥深き森、うやうやしい祭祀風景、瓦家ののどかな島風景などの作品が多い。

ところがこの『よからぬ相談』には、感情豊かともいうべき犬たちが生き生きと描かれ、どこの国であろうが全ての人たちがこの絵を一目見れば、すぐに感情移入してしまう魅力がある。ここには国境を取っ払った「絵」の大きな力が宿っているようだ。

犬は人間のようであり、人間は犬のようである。この魔境の世界に作家はぬかりなく誘導している。絵を観るものは、否が応でも絵に引っ張り込まれてしまう。これが文句なく優れた作品であることの証拠だろう。

ぼくは、このことがあってからずっと、あのハワイ大学の先生が奥さんの了解をもらって、再び沖縄を訪れるのを今か今かと待ちわびている。

<當山>