投稿日時:2016年10月04日(火) 16:44
名作は四つの目で描かれている。
ヨーロッパの名画といわれる作品をみてきて、ふたつのことがいつも気になっていました。ひとつは、遠くからみるとおだやかなちゃんとしたタッチなのに、間近にみると、なんとマチエール(油絵の具)がぶっとく厚く塗られていたこと(19世紀後半に発生した印象派など)。もうひとつは、近くからみるととても雑で荒々しくおもえるのに、遠くからみると、写実的でしかも丁寧な色塗りにみえることです(16〜17世紀のスペイン画家、ベラスケスなど)。
ぼくは、このふたつの魔法がいつも気にかかっていました。「いまさら、そりゃ誰でも知っているよ」とみなさん言うかもしれませんが、とにもかくにもぼくは最近その理由に気づいたのです。つまり、画家は制作しているときに、すでに完成後の作品のイメージを想像していたこと。そして、なにより画家は制作中は間近で没頭しているかもしれませんが、そのときおそらく「後ろで立ってこの作品をみているじぶん」もいたのだということです。
いわば間近のふたつの目と、もうひとつ遠くからみているふたつの目、みんなで四つの目で作品を描いていたのだとおもいたったのです。そうでなければ、近くでみた印象と遠くからみた印象を使い分けることなんてとうていできないでしょう。これが画家にかぎらず、スポーツ選手、職人、詩人、そのほかのすべての職業の優秀なひとたちにあてはまるような気がします。