投稿日時:2016年05月30日(月) 13:59
ギャラリー散歩
ボクネン作品に『さかな』(1989年、47.5×62.6cm)というのがある。画面一杯にイラブチャーやほかの熱帯魚たちが輪になってぐるぐる巻きに詰められて描かれているのだが、なんとも立体感というかまとまり感といったものがよく表現されていて惹き付けられる作品である。
この作品の線は太いのだがなんともなめらかで、魚たちの膨らみや生き生きとした臨場感がよくとらえられている。作品を観ていると、作家が魚をよく知っていて、こよなく愛しているということがよくわかる。
とすればこの作品の一番の魅力はなんだろうと考えるに、作品素材の際立たせ方や構成力などによるということもあろうが、やはりなんといっても魚たちの“目”の造形ではなかろうか。三匹とも独特の“目”をしているのである。例えば一番上の魚の“目”は、生き生きと鑑賞者を凝視する“目”であり、真ん中の魚の“目”は大人しくなにかをものうげに見つめている。そして一番下の魚は、異界を見つめているような幻惑的なブルーの“目”だ。
作品に表された“目”たちは、そのまま鑑賞者のものになるから、その“目”の世界はもっと広がっているに違いない。