投稿日時:2016年05月10日(火) 14:40

ギャラリー散歩

GS17

先月、東京に行く機会があって、東京国立博物館での『黒田清輝生誕150年』を観に行ったつもりなのですが、どうしても都合がつかず、行けませんでした。話はその黒田清輝の話ではありません。その近くでやっていた17世紀に活躍したイタリアの画家カラバッジョの話です。

カラバッジョは「黒を使うことは絵を支配することにつながる」と言われた画家で、この作家の黒の使い方は作品のなかに大きな意味をもち、観るものに不安や想像力をたくましくさせるものです。もう少し言えば、19世紀のはじめころに哲学者マルティン・ハイデッガーが芸術の意味を言説した「立ち現れ」と「保蔵性」の闘争もよく象徴させる作品です。

ちなみに上記の「黒の使い方」と「立ち現れ」及び「保蔵性」を獲得したボクネン作品といえば、上掲の『蟲河』(むしかわ、2002年、182.0×91.0 cm)が筆頭にあげられるでしょう。この作品は、まさに「黒が絵を支配している」ものだとも言えましょう。この『蟲河』は「黒の使い方」によって作品を観てびっくりさせられるばかりでなく、遠い夢のなかに引き連れられていかれそうな不安を感じないではいられません。驚愕と不安は芸術に欠かせない要素なのだとつくづく感じさせられる作品です。