投稿日時:2014年05月15日(木) 11:35
ばんばんニュース 第9号
最近、ある50代後半の主婦の方Mさんが美術館を訪れてきました。その方、南部で30年あまりも小学校の先生をなされていたのですが、定年2年を残して辞職する決意をしたというのです。「定年前になにかをやらなければ」というおもいが、突然こころのなかに起こってきたというのです。それは、じぶんでもなんだかわかりません。
とりあえず、学校を辞めて時間ができたものですから、まずは本棚の整理を始めました。するとそのなかに『青い海』という沖縄で発刊されていた文化郷土誌でした。それの2冊だけあるのはどうしてだろう。Tさんは、その雑誌を何気なくめくってみました。するとそこには姉が書いた児童文学作品が掲載されていました。2冊とも入選した作品だったのです。
現在、姉は病に臥している毎日だそうです。そこでMさんはひらめきました。「このふたつの作品を手づくり製本で姉にプレゼントしよう」。すっかり忘れているだろう若い頃打ち込んでいた作品をあらためて読んでほしいとおもったのです。そうすれば、姉ばかりでなく家族、子や孫までみんな姉の作品にふれることができる。姉もなにか新しい気持ちをもてるのではないだろうか。Mさんはこころに清々しい気持ちが起こってくるのを感じたんです。
そして私はMさんにふと言葉をかけました。「そうすると、ねぇさんの作品を蘇らせるために教職をお辞めになられということになりますね」。Mさんは笑いながらうなずいていました。
ところで、その雑誌とボクネンと私はどういう関係なんでしょうか。私は30数年前、その雑誌の編集部のいて、そのMさんの姉さんの作品に関わっていたのです。そしてぼくがこの作品に挿絵の依頼をした画家がボクネンだったのです。Mさんは、インターネットでボクネン→美術館→館長(當山)のつながりで探しあてたというわけです。
その話にあとからボクネンもかかわってきて昔ばなしに花が咲いた後、手づくり挿絵を使ってもらうことに喜んでオッケーを出したというわけです。