投稿日時:2012年09月24日(月) 14:00
万想連鎖 24
万想連鎖24 今年も島風が吹く
那和 慎二 NAWA Shinji(福岡通信員)
今年も熊本で開催される沖縄音楽イベント「琉球の風2012」。そのポスターが出来上がった。以前、万想連鎖12に書いた「ああ、このポスターにボクネン作品を使えたらなあ。」その願いは叶った。昨年末にイベント主催者とボクネンサイドの橋渡しをして許可をいただいていたから、その時点で願いは叶っていたのだが、現実に出来上がるまでは、まだ夢の中にいた。その夢が正夢となったのだ。
これまでの「琉球の風」ポスターからも島風は吹いていた。しかし、ボクネン作品、『さきよだの神歌』が使われた今年のポスターから吹く島風は圧倒的だ。そのポスターを見る者を、瞬く間に島へと吹き飛ばす。樹々のざわめきや鳥の群れ鳴く声とともに三線や太鼓の音、島人の歌声までもが幻聴となる。このイベントのプロデューサー、ボクネンとは旧知の知名定男が揃えた出演者、その中に上原知子の名前があった。昨夏、アカラのイベントで間近に見た姿、間近に聴いた歌声が蘇ってくる。この偶然か、仕組まれた必然か、ボクネンの絵にモデルというものはないのだろうけれど、『さきよだの神歌』と、かの歌姫のイメージは、まったく重なっている。
ポスターにボクネン作品を使うことを許可いただいてから、どの作品を選ぶかが問題となった。数千点といわれる膨大なボクネン作品。しかし、実際に見たことがある作品は数限られている。改めて手元で見ることができる作品も、画集に掲載された作品、過去にちぎったカレンダーを捨てられずに保存した作品、画像データとしてパソコンに保存していた作品などである。イベント首謀者の濱さんは、末期癌の病床にあったが、何度か話し合い、実質的なイベント運営者である山田高広さんも交えた結論は、『さきよだの神歌』これしかないというものだった。この選択が、結果として、上原知子さんの出演につながったのだろうか。それとも、単なる偶然なのか。どちらであったとしても、この結果は、その必然として、リンケンの来場をもたらすと期待している。昨夏のアカラと同様に。まさか手ぶらでは来場することはなく、イベント当日に、手にしたギターで予告なしにステージに立つと期待は膨らんでいる。さらに妄想まで膨らませるならば、その横に三線を手にしたボクネンが立っているのだが。
イベント首謀者の濱さんは、残念ながら4月25日、永眠されたが、その志は、山田さんほか多くの仲間に引き継がれた。9月30日(日)、今年も熊本に島風が吹く。その風はきっと、濱さんに歌姫の歌声を届けてくれるだろう。 (写真上『さきよだの神歌』、写真下「在りし日の濱さん(左)と筆者」)