投稿日時:2011年11月01日(火) 20:16

万想連鎖17

風の島からファサード2


ボクネン版画に思いを寄せる全国の通信員たちの「声」を届けます。トップバッターは、福岡県の那和慎二さん。その20年来のファンぶりは、作家や作品の機微にふれ、思わぬ情報がいっぱいです。それでは、那和さんの『万想連鎖』シリーズをごゆっくりどうぞ。

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 万想連鎖17 夏休みの宿題

  那和慎二(福岡通信員)

 

散無空花の咲く.jpg

 

散無空花の咲く-2003-
 5月15日のボクネンさんと上原知子さんのトークショーは、大変な盛り上がりとなった。予告されていなかったが、ご近所だしご主人だから当然と言えばそうだが、ギターを抱えた普段着の林賢さんも参加して、ボクネン作詞・林賢作曲の百曲に及ぶという歌の世界を垣間見ることができ、前夜のライブで堪能した美声の主とボクネンのキャラクターの絡み合いも十分楽しむことができた。當山館長ソロカチャーシーはその盛り上がりを倍増したが、満席の会場の余韻を楽しむ間もなく、帰りの便の時間を気にして、ボクネンさんに挨拶もできないまま、スタッフからの配慮をいただきながら、その場を後にしなければならず、残念であった。しかし、残念で終わらないところがおもしろい。夏休みを利用して、できなかった挨拶だけでもしておきたいとメールで問い合わせてみたところ、望外の回答が返ってきた。當山館長からボクネンとのランチのお誘いであった。一もニもなく、指定された日時を中心に4泊5日の沖縄旅行を組み立てた。

 二度の大型台風に痛めつけられていた沖縄だが、福岡から空路本島に迫る始発便は、それまでに経験したことがない経路で、絶好の晴天の中を本島西側の伊是名・伊平屋上空を遊覧飛行するように飛んでくれた。ボクネンと会った翌日に足を延ばそうとしている両島を、事前視察するかのように上空から思いがけず一望できたことは、この旅行の幸先の良さを予感させた。伊是名と伊平屋。地図上では隣同士だとわかっていたし、何度も訪れた伊是名から伊平屋は手に取るように見る事ができた。しかし、ボクネンとのご縁から伊是名に感じた親しみを、なぜか伊平屋に持つ事ができず足を遠ざけていたのである。眼下に広がる景色は、伊是名と伊平屋が地理的にはほとんど一体であることを示していた。わずかな海を隔てて別々の生活を営むうちに、それぞれに培われる文化や風土はあるだろう。そこから違いが定着し独自なものへと発展するものもある。今回、初めて伊是名から伊平屋に渡り、そこにある隔たりと変わらないものを、わずかであるが感じることができた。言葉にするのは難しいが、これだけは事実。伊是名では絶対会う事ができないハブに、幸か不幸か伊平屋で2回も会ってしまった。咬まれなかったのだからラッキーということだろう。
 
 今月は8月の最後の休日だから、ボクネンの想いを綴ることを夏休みの宿題になぞらえた。だから苦労して綴っているかというとそうではない。画集をめくり、アカラでボクネンと過ごした時間を思い出すうち、スイッチが入った。ボクネン作品のように一気にというわけにはいかないが、新しい発見があった夏休みだから、自由課題の作文ならスラスラだ。書けるか書けないか、そこにはわずかな隔たりがあるだけで、あまり変わらないのかもしれない。