投稿日時:2011年11月04日(金) 16:10

おしゃべりQ館長 File 04  

OQ表紙

〜なぜ色を使うの!〜

 ボブ・ディランが生ギターから電気ギターに替えて歌った年代後半、写真家の東松照明さんがモノクロからカラーに変えたのが1970年代前半。ふしぎなほど、この二人のアーティストはほぼ同じ時期に表現の大変換をやっているんだよね。 

 この二人の転換には、なんだか共通するなにかがあるような気がするんだ。そんなことを考えていると、最近詩人の吉増鋼造さんの講演を聴く機会があって、ハッとしたんだよね。吉増さんが、東松さんの写真について次のように言ったんだ。 

 「東松さんがモノトーンからカラーに変えたのは、そこに風を表わしたかったからなんだね」 

 ぼくは、びっくりしたよ。「ああっ、そうか。風を見たり風の存在を感じるには、カラーが必要なんだなぁ」。なんだか、ほんとにすごいもんだなぁという気がしたよ。その詩人の発想には。

 そして、東松さんが作品をカラーに変えたのは、ものすごい勇気も必要だったろうな。だってモノクロは重厚でカラーは華やかってイメージがあるだろ?つまりさ、表現の深いイメージとなると、どうしてもぼくたちのなかには、「黒がいい」って先入観があるんじゃないだろか。そういうなかで東松さんは、敢えてカラーで真っ向勝負したんだね。それはどういうことかと言うと、東松さんは「どうしても、風を感じる写真」が撮りたかったということじゃないだろうか。

 

 そう言う意味でいうと、さっきのボブ・ディランとも話はつながっていくんだね。つまりベトナム戦争の全盛時代1960年代後半)の「反戦歌のイメージから抜け出すには、『風に吹かれているだけではにっちもさっちもいかなかったと思うよ。”反戦フォークシンガー”から卒業するためにディランは電気ギターを使って「目に見える風」を歌ったんだね。そりゃあもうステージでは猛烈なブーイングの嵐を受けたらしいよ。それでもボブ・ディランは勇気をもって歌ったんだね、きっと。 さて、ボクネンが盛んに色を使いこなしているだろ?

 

 もうその理由がみんなにも、わかったんじゃないだろか。(當山)