投稿日時:2011年05月24日(火) 14:49

万想連鎖 7

風の島からファサード2

 ボクネン版画に思いを寄せる全国の通信員たちの「声」を届けます。トップバッターは、福岡県の那和慎二さん。その20年来のファンぶりは、作家や作品の機微にふれ、思わぬ情報がいっぱいです。それでは、那和さんの『万想連鎖』シリーズをごゆっくりどうぞ。


万想連鎖7 趣味の沖縄営業

 那和  慎二(福岡通信員)

  知人友人から「色んなものが出てくる」と評判をとっているお気に入りの黒いバッグ。自宅と職場の往復に持つ仕事用のバッグではあるが、もちろん私用の物も色々と入っている。沖縄は、いつでも誰とでも話題になることが多く、話題があがれば、必ず食べ物の話になる。だから、そんなとき、バッグから安里「うりずん」の写真付きのメニューを取り出して広げれば、話題は一層はずむ。全島の地図と酒造所が載っているのも、すこぶる都合が良い。石垣の「白百合」を知っているそこそこの泡盛通でも、伊是名の「常磐」は飲んだことがなかったりする。そこで、伊是名酒造所で直接買った「常磐」44°を五升甕に仕込んだ話でも披露すれば、たちまち鼻高々というわけである。自慢もするが、機会があれば是非飲んでほしいと営業も忘れない。

 58ヶ月も住んだ沖縄だから、お世話になった土地を離れても、恩返しをし続けたい。だから泡盛を飲む。恩返しが先か泡盛を飲みたいが先か、自分でもよくわからないが、それはどっちでもいいだろう。泡盛を飲めば沖縄経済に貢献することは間違いない。自分一人で飲める量は知れているから、できるだけ人にも勧めるようにしているわけだ。飲んでも沖縄営業を忘れない。

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 沖縄好きは多いので、これはという得意分野を持ち合わせていなければならない。泡盛もその一つではあるが、飲むことが好きなのであって、人様に蘊蓄をたれるほどの知識を持っているわけではない。古酒が旨いことは飲めばわかるが、銘柄や年数やらを当てられるとも思わないし、そうなりたいとも思わない。自分なりに楽しみたい。できれば、その楽しみを人にもおすそ分けしたい。そう思っている。

 もう一つの得意分野は、もちろんボクネンである。バッグの中には、百均で買ったミニアルバム。そこには、明治神宮で撮ったボクネン生写真、北谷ギャラリーでのツーショット、「緑門」「波産玉」など所有する数点のボクネン作品写真、ムーンビーチの人魚像写真、伊是名の金丸像写真、わしたショップ企画「妹の祈り」ラベル、ティンガーラ古酒6本セット写真などが収められている。しばしば沖縄を訪問する理由、ことに伊是名まで足を伸ばす理由を聞かれれば、ボクネンを語らずにはいられない。沖縄通ならボクネンを知らない人は少ないが、まだ、一般には、その魅力に気づいていない人は少なくない。機会が得られたときに、アルバム片手に熱く語っておけば、どこかでボクネン作品を見たときに、はっと気づいてもえらえるかもしれない。ボクネンを知り尽せるとは思わないが、自分なりに楽しみ続けていきたい。そして、できれば、その楽しみを人にもおすそ分けしたいと思っている。