投稿日時:2010年10月22日(金) 16:02
風の島から Episode 5
点描画家大城清太さんとアーティストトーク
「憧れのひとに来てもらって緊張のしっぱなしです」
盛んに照れ笑いしながら落ち着かないのは、点描画家の大城清太さん(写真右)。浦添市美術館で行われた『大城清太 点描画展 心己一点』(10月9日〜10月17日)のアーティストトーク会場でのひとコマだ。ボクネンは6番目のゲストとして出演。会場も100名近くのファンが訪れ、笑いと真剣な表情に包まれた。
大城さんは「命の尊さ」や「自然の尊厳」をテーマに、緻密な表現で点描画の世界を切り開く、いま注目の若手作家。ボクネンもずっと自然と向かってきた作家だけに、トークが始まるまえからふたりの雰囲気はすでにいい感じ。それもそのはず、大城さんは10数年まえ、ボクネンが新都心の「画廊沖縄」での展覧会で会った時のことがきっかけで、作品に取り組む姿勢が俄然変わったという。
「ぼくも、あのとき、ケンカを売るつもりで(笑い)、いろいろ質問したんです」
すると、話のなかで、ボクネンが”喝”とも言うべき迫力で眉間にしわを寄せたという。
ボクネン「キミはこれまで、何点くらい描いたのかね?」
大城清太「はい、4〜5点ですかね」
ボクネン「……」
大城清太「…」
ボクネン「キミは創造の神を愚弄するのか!!」
そのとき、大城さんは目が点になるほど驚いたと言う。
もちろん、ボクネンは才能ある作家が絵を数多く描かないことに怒りを覚えたのであり、大城さんのことを思って”喝”を入れたのである。ご承知のように、ボクネンは「描き足らじ」を座右に銘にし、時間があれば作品を彫ることに集中している。一生かかっても、微々たる作品の数しか創作できないことを胸に銘じている。若い才能のある作家が作品を可能な限り創作しないのは、ボクネンにとってまさに「創造の神を愚弄」することなのである。
花城さんは、まず「愚弄」という難しい言葉に当惑。凄い言葉を使う人だなとびっくり。でも、次第にボクネンの言葉の意味を知ると、それからはいつもスケッチブックを片手に描き続けた。
「あの”喝”がなかったら、いまどうなっていたかわかりません。この道に進んだのも実は、ボクネンさんのおかげなんです」
とそれを聞いたボクネンは、唖然。
「へえ〜。そんなことがあったの?知らなかったなぁ」
すると、会場は大爆笑。
アーティストトークもいよいよ後半。大城さんは憧れのボクネンに感謝を込めて自作品を贈呈。花城さんの奥様も花束のプレゼント。
「ぼくは、あまりもらい物がないもんですから、ほんとにうれしいなぁ。いいもんだね、もらうって…(笑い)」
最後に、大城さんが絵描きになって心に刻んでいることをもうひとつ、披露。あばあちゃんが「絵を描いてたくさんの人を喜ばせなさい。それが大事なことだよ」と以前に話してくれたこと。これも、いつも胸にしまってある大事なたからもの。このおばあちゃんのひとことも、ボクネンの”喝”とともに、創造のエネルギーになっている大城さんだ。
その話を傍で聞いていたボクネンも、ただ黙ってニヤニヤしながら嬉しそうにうなずいていた。