投稿日時:2011年03月08日(火) 15:50

『ゆれる中空(なかべ)』開催にあたり

作家の23年間に及ぶ版画活動のなかで、作品のモチーフとする「中空」(なかべ)は、その点数が多いというだけでなく、その内的渇望としての思いがかなりの比重をもつものとして、注目せざるを得ない。

ボクネンが幼少のころ、母の胸に抱かれやすらぎの世界にひたっていると、かならずや理由ありしげな風が吹く。その風のゆくえを視線で追うのもつかのま、母との絆が一瞬にして風によって断ち切られてしまう。その風は、いったい母親を中空に投げ出したか、あるいは幼児である自分を投げ出したのか、わからない。

おそらく、そのこと自体はたいしたことではないだろう。大事なことは作家が中空に目をやると、そこには神、すなわち神女(巫女)がいつのまにか、踊っているのか、佇んでいるのかわからないのであるが、たしかに彼女たちが存在するという事である。
 この中空に浮かぶ神女(巫女)をそのまま母親としてとらえていいし、少女ととらえてもいい。
 いわゆるこの作家の女性像に相当するものとしてとらえていい。この「中空」をモチーフとした作品群は、水平線と天空(垂直方向)のあいだに素材(神)を存在させる事で、「人間のありよう」を、描きたいのだと思われる。自然につつまれながら自然に関係せざるを得ない人間。その「ありよう」は、みずからを罰しつづけることしか人間が自然とつきあう方法はないように思われる。

 自然をこよなく愛しながら、自らを律するために、ボクネンが到達し得る最終地点が永遠に見えないように思えるのは、その「中空」に描かれる像が、マザーシップという根底から発祥するということが一番大きな原因であろう。
 作家に限らず、すべての人々が、それぞれの「中空」を胸に秘めていることは間違いないだろう。
  それぞれの人間は「中空」に何を見、期待するのだろうか。
 さあ、この展示会であなたの「中空」に会いに来てください。ボクネンの思いと、あなたの思いが重なるはずです。

ボクネン美術館 館長 當山 忠


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現在ボクネン美術館で絶賛開催中の『ゆれる中空』展。
皆様お誘い合わせの上是非一度ご来館下さい。                  スタッフ一同