投稿日時:2016年06月13日(月) 14:43
ギャラリー散歩
中世や近世からの日本の水墨画や浮世絵が外国の名だたる画家に評価されてきました。その理由はどこにあるのかといいますと、平面における遠近法の独特的な構図とかいろいろと言われてきましたが、どうもそういう学問的な意味ではなかなか実感できないものがあります。先頃、亡くなった世界的な経済学者ピーター・ドラッカーは日本画の収集家としても有名ですが、やはり「日本美術と恋に陥ってしまった」とまで言っています。ドラッカーは浮世絵というより水墨画を好んでいたようですが、それでも彼ら外国人たちがなぜ、浮世絵や水墨画に魅せられたか、やはりこれまでの説明ではぼくとしては納得しがたいものがありました。
それが最近ある水墨画をみて、なんだか腑に落ちたのです。与謝蕪村という18世紀(江戸時代中期)の歌人・画家がいますが、そのひとの作品『夜色楼台図』(やしょくろうだいず)という水墨画の作品があります(興味のある方はネットでどうぞ)。京都の雪におおわれた絵なのですが、これがもうどうして、西欧人を日本画に虜にさせるものがいっぱつでわかるという水墨画です。しんしんと降る雪景色の京の都が、なんとも観るもののこころをゆっくりと引き込みます。ああ、これが西欧人に描けない「自然と人間のこころ」が融和した世界なんだな、と思わされてしまいます。
そういえば、奈良時代あたりからの和歌の世界も「自然と人間のこころ」の重ね合いによって、当時のひとびとの「心の機微」を伝えるものです。やっぱり日本人は「自然」をフィルターにしておもいを伝えてきたんですね。