投稿日時:2015年10月26日(月) 15:35
おしゃべりQ館長 その35
先月9月12日に行なわれた「アーティスト・トーク」(『絵の舟に乗って』)では、会場のみなさんに絵の観賞をしてもらい、意見を伺いました。そのなかで興味ある来場者がいましたので、ここで紹介したいとおもます。その来場者というのはユタ(沖縄の霊媒者)で、かねてからそう言う方というのは、絵についてどういう感じをお持ちなのだろうかと、とても興味をもっていました。
そのユタの方は、『大礁円環』(2000年、186.0×275.0cm)を観てひとこと、こう言ったのです。
「この絵には“回転”を感じます!」
確かにこの絵には、中央にパイプラインのような魚たちがつくった“洞穴”のようなものが描かれています。すなわち、このユタはこの洞穴を“回転”と見立てたことになります。しかし、それはぼくにすれば、なんだか近視眼的、或いは局所的な気がしないではありません。それでもユタの方は、“魚の回転する動き”に深い興味を注いでいることになります。
しかしです。この『大礁円環』のテーマはやはり“近視眼的”ではなく、大局を見る“円環的”なのだとおもいます。言わば、このユタの方は“回転”という感性豊かで直観的な見方をしてくれたのですが、やはりこの絵の大きな見所は“円環”なのだとおもうのですね。とは言っても、「絵は観たひとのもの」ですから、そのユタの方の“回転”という見方はそれなりに、おもしろい観賞眼であることに間違いありません。
つまり、彼女にとっては、この絵の醍醐味は“円環”ではなく“回転”なのです。やはり、それはそれでたいへんおもしろい見方なのだとおもいます。ひょっとすると、この『大礁円環』には、“円環”の根っこに“回転”というエネルギーが海底地盤のように息衝いており、“回転”というもっと地球的で直接的な隠れたテーマがあるのではないかというのも興味深い見方なのかも知れません。
それにしても、絵はあいもかわらず、鑑賞者の視点が独自に出て来るものです。勉強になりました。
『大礁円環』