投稿日時:2013年11月22日(金) 14:37
はったりQ館長 File 1
みなさん、こんにちわ。このタイトルなんだか、聞いたような感じがするとおもいます。実は表街道の『おしゃべりQ館長』が拾えない話を、このコーナーでは裏街道の『はったりQ館長』としてお話しできればとおもうたしだいです。
副題の「〜アートを掘ろう〜」もそういう意味で、美術ではあまり話題にしないことや、はたまた「ここまで言うか」というほどの”はったり”で切り込んでみたいとおもうのです。
しかしです。この”はったり”。美術に限らず芸術では、あながちばかにできないものです。つまり美術は100パーセントの確実な「ことば」で説明するのは不可能ですから、たとえ中央の大評論家先生でもいくらかの”はったり”は覚悟しなければなりません。
つまり、ほんとうのところ議論を前進させるためには、はったりであろうが、ロータリーであろうが、必要なことのはずです。たしかに、しょっぱなから”はったり”はいけません。ある程度は真剣に考え抜いて、そこから前に進めないときに、”はったり”で突破口を開くことも必要だとおうのです。
さて、今日のブログの”はったり”はなんでしょうか。それは、画題の英文訳です。そのままのローマ字も芸がないものですし、かと言って生真面目に英訳するのも、なんだか「親切さ」が足りません。だいたい生真面目な優等生の訳は相手にじゅうぶんに伝わらないどころか、別の意味に飛び火する可能性もありますから注意しなければなりません。
ちなみに、いま開催中のボクネン展『モノクロームの歌』の英訳の話をひとつしてみましょう。担当は、英文学専攻出身の「美樹ちゃん」と、彼の恩師であるネーティブスピーカー、そして英語は中学からポップしか聞いてこなかったQ館長の3人。ここでいろいろあったことはご想像がつくかとおもいます。
日本人が見ればこの訳がいいとか、外人がみればこんな英語がいいとか、なにしろ「文化」の問題もありますし、日本側の弱点、アメリカ人の弱点が玉石混交。
ちなみにいくつかあるうちで、本展示会のテーマの重要作品である『牛頭』(ごず)訳の話をしてみましょう。作品は牛の頭が前面に描かれているものです。
まず、この「ごず」の読み方。日本人でも読めない方もおおいでしょう。それもそのはず、仏教の戯画に出て来る頭が牛で体が人間という禽獣系のキャラクターですから。外人だってなにがなんだかわからないはずです。なにしろ作品自体は日本人も外人も「牛頭」(ごず)が仏教戯画と関係するものとはすぐに理解できないはずです。作家にはそれなりのタイトルへのおもいがあるかも知れませんが…。「牛頭」そのものを英語にすることは避けることにしました。この直訳は適さないということになります。「牛頭」ってローマ字や英語でスペルを並べても、外人への絵心に届くとはおもえません。
それで私たちは絵の「意味」から考えることにしました。ある牛飼いが大事に育て働いてもらっていた「家畜牛」が長年の労苦のうちに、ついに命果ててしまった。そのとき牛飼いは言ったはずです。「長いあいだ、ありがとうな。おまえは、ほんとにオレのいいヤツだったよ」と…。
ここで私たち英訳班はこの「オレのいいヤツ」に目をつけて『MySidekick』にしたのです。どうですか。いいとおもいませんか。それでも、やはりどこかに”はったり”は隠れています。でもいいじゃないですか、これは芸術ですから。世の中にはいろんな感性をもった人間たちが星座のごとくいるのです。しかたありません。とにかく作品を観てくれるひとが、なにかを感じて気持ちよく美術館を出て行ってくれれば、これにこしたことはないのです。