投稿日時:2011年11月12日(土) 13:44

美術館便り ~ボクネン展vol.4『鼓動』によせて~

  11月11日より、ボクネン美術館での新たな企画展、『鼓動』がスタートしました。躍動感溢れ、戦う神の化身とさえ思えるような軍鶏を描いた、沖縄では初公開の作品、「焔(ほむら)」をはじめ、見る者に畏怖の念さえ抱かせる作品たちが皆様をお待ち致しております。また、開催にあたり当美術館学芸員の當山 睦子の挨拶文を紹介したいと思います。

 

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 『鼓動』とは、”震え動く”や”振るわし動くこと”、”心臓の動き”または”胸に伝わる響き”などを意味します。ボクネンの版画作品には、まさにその言葉に感じるイメージが存在しているような気がしてなりません。

 燃え上がる様な威圧感で今にも飛びかかってきそうな闘鶏(軍鶏)(「焰」1987年)の勇ましさの中にある、どこか冷たく張り詰めた緊張感。針の様な視線の奥にある誰にも触れられない本能の強さには、身振いを感じさせられます。

 また、龍のような様相でうねり動きながら成長する大木の姿(「巌臥蒼龍2008年)には、目に見えない時の流れを静かに突きつけられているようです。

 そして人間の心の深層に潜む、自分でも知り得ない感情に戦くような様(「いたたまれない愛」1996年)は、脱力さえ憶えます。どれも極端な表現ではありますが、これらを眺めていると、作品の世界に引きずり込まれるような感覚になります。これこそがボクネン版画が持つ魅力の一つだと感じます。

 今企画展では、『鼓動』をキーワードとして、「自然」「生物」「人の感情」を軸に、”斜めから見たボクネン”とでも表現出来るであろう作品の数々を展示しています。これらを通して、日々の移り変わりの中で当たり前で見過ごしがちな変化や、それぞれの大切な何かにふと気付くきっかけになればと思っています。

 作品の奥の方にある「感情」「動き」「音」「匂い」に目を凝らし、ボクネン版画に込められた、静かな、或るいは強烈な『鼓動』を沢山の方に感じて頂ければと思います。

                                                               ボクネン美術館学芸員 當山  睦子