投稿日時:2010年11月06日(土) 15:58
風の島から Episode 6
天才ギタリストとの再会
もうすぐ出番を迎えるギタリストの楽屋で、ふたりの男が笑顔で抱き合った。そして、豪快に笑い合う。
ふたりの話を続けるには、1980年代に戻らなければならない。そのころのオキナワンロックは1970年代中ごろの第1次の爆発的ブームも過ぎ、すでに沈静化していた。
ちなみに1970年代の沖縄のロックバンドの双璧と言えば、『ムラサキ』と『コンディショングリーン』。最初に載っけた写真でボクネンと抱き合っているのが、その『コンディショングリーン』の天才ギタリストと言われたシンキである。
1980年代。ボクネンがデザイン会社を始めて、まだそんなにならない頃。デザインの仕事だけでもものすごく忙しい時期だ。それでもボクネンは目をギラギラさせて、なぜか会社のみんなに声をかけたのである。
「1970年代のオキナワンロックを再燃をできないか?」
その言葉を発して以来、ボクネンは歴史家や地域プランナーを巻き込み、「ムラサキ」や「コンディショングリーン」の復活へと行動を始めた。当時、10年以上も前に人気のあったオキナワンロックをもう一度甦らせることは、沖縄そのものも元気づけるのではないか、と思ったのである。
ボクネンは、まず『MURASAKI WHY NOW?』を恩納村のグランドパークで立ち上げる。そして次に『PEACEFUL LOVE ROCK CONCERT』(後にCONCERTをFESTIVALに変更)を企画した。この『PEACEFUL LOVE ROCK FESTIVAL』は、現在でも中部広域圏の夏の風物詩になっているから、みんなもよく知っているだろう。
実はその『PEACEFUL』。ボクネンがプロデューサーとなって駆け回り、スタートさせたロックコンサートなのだ。デザイナーやイラストレーター(その当時はまだ版画を始めていない)が、なぜロックのプロデュース?と、当時はみんな不思議がった。
しかし当時のボクネンにとっては、街にあるものはなんでもデザインの対象。そのことはボクネンの言葉で説明すると「デザインを立体化する」ということになる。机の上で作業することだけがなにもデザインではなく、感性を広げればなんだってデザインになるというのだ。それは「街の夢を実現化できる」ということにもつながることなのだ。
Tシャツなりレリーフなり焼物なり会社経営なり、音楽だってなんだって同じことだった。それは、これまでのボクネンの足跡をみればすぐにわかるだろう。
オキナワンロック華やかりしころの当時も、シンキとはよく話し、飲み、音楽や街をぞんぶんに楽しんだ。そのしたたかな強者どもの街の風を切るいくつかの物語は、現在でも語りぐさとなっている。
先月、シンキのコンサートがあると偶然に耳に入れたボクネン。興奮したまま、すぐにコンサート会場の楽屋へ。一目見るや、すぐに抱き合ったふたり。
当時を思い出したのだろう。「また、音楽の街を楽しもうぜ」というふうに、笑いながら握手を交わした。