投稿日時:2015年04月03日(金) 15:42

万想連鎖34

風の島からファサード2

万想連鎖34 サンボアバー

那和慎二(大阪通信員)

東京と熊本から関西観光に来た二組の友人夫妻を迎えた。たっぷりと京都観光を楽しんだ後、大阪らしい夜をとの希望だったので、日本一の長さを誇る天神橋筋商店街アーケードを散策し、朝ドラ「ごちそうさん」の舞台でもあった天満市場の一角の店に落ち着き生ビールで乾杯。品揃えの良い地酒の杯を重ねて盛り上がり、二軒目を探したが、土曜日の夜ということもありどこも満席。それでも、イタリアンの店の調理場の上に設えた屋根裏部屋のようなスペースに6席を見つけて、ワインで乾杯。料理と酒を堪能したものの、もう帰るにはちょっと名残惜しい「どこかでもう一杯?」の気分。ふと、過日この近くで見つけていたバーのことを思い出した。「サンボアバー」の名は関西の酒飲みなら知っている。のれん分けで何店もあるその天神橋店。氷を使わないハイボールの旨さは最近の流行よりずっと以前からのもの。これを遠来の客人に飲ませず帰らせるわけにはいかない。幸いちょうど店の一角に収まることができた。席に座ったそのとき、隣の妻が「あっ、ボクネンさん!」と声を上げた。ちょうどその席の壁に小さなボクネン作品「シーサー笑い」が掛かっていたのだ。よく見ると近くに棟方志功の同サイズのモノクロ作品。初めて入った店のセンスの良さ、そして、その空間の居心地の良さの中で、ハイボールによる三度目の乾杯となった。沖縄をまだ知らなかった若い頃、何度も立ったサンボアのバーカウンター。その記憶の繋がりに「天神橋サンボア」へといざなわれ、そこで、ちょうど沖縄に住み始めた頃、1989年のボクネン作品と再会する。その偶然が楽しい一日の締めくくりとなった。

先日、訃報があった。私とボクネン作品との繋がりを作ってくださった方のお一人、那覇安里「うりずん」の店主、土屋實幸さん。昨年、ついに沖縄に行けなかったことが悔やまれる。わが家にある三つの古酒甕は、他ならぬ「うりずん」=土屋さんの影響だし、伊是名に行くと言ったら喜んで運天港まで送ってくださり、だから甕の一つには伊是名の銘酒「常盤」が詰まっている。弔問には行けなかったが、感謝とともにご冥福をお祈りしている。

さて、来る5月17日(日)は、熊本で「琉球の風2015」が開催される。ボクネン作品「さきよだの神歌」がこの音楽イベントのイメージとして定着した感じだ。一度は引退しながら復活を果たした知名定男さんのプロデュースによる豪華メンバー出演の贅沢な一日。泡盛の酌み交わし、沖縄音楽に酔いながら、様々な人たちとの旧交をあたためつつ、人と人がつながっていること、つながっていくことの有り難さをかみしめたい。

BR34

シーサー笑い(1989年)