投稿日時:2011年06月30日(木) 11:55

万想連鎖 10

風の島からファサード2

ボクネン版画に思いを寄せる全国の通信員たちの「声」を届けます。トップバッターは、福岡県の那和慎二さん。その20年来のファンぶりは、作家や作品の機微にふれ、思わぬ情報がいっぱいです。それでは、那和さんの『万想連鎖』シリーズをごゆっくりどうぞ。


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 万想連鎖10 大作に囲まれる

 那和  慎二(福岡通信員

 

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  沖縄を離れ、福岡・熊本を経て、大阪勤務となったとき、いよいよ沖縄は遠くなったと感じていた。沖縄に行く仕事を作るという努力はしていたが、なかなか実を結ばない。やっとこさ出張にこぎつけても仕事は仕事である。沖縄を楽しめるのはわずかな時間。それでもないよりはマシなのではあるが、そんなとき、沖縄を堪能できる情報が突然飛び込んできた。東大阪市民美術センターで、「名嘉睦稔展〜沖縄の風を彫る」が開催されているという。残された会期は少なかったが、なんとか予定をやりくりして会場に辿り着いた。関西の多くの人たちにもボクネンを見てほしい。ボクネン作品の魅力を知ってほしい。そう願って会場に行ったが、すぐ近くにある花園ラグビー場は知られていても、そのセンターを知っている人は少なかった。案の定、日曜日にも関わらず会場に人影はまばらだった。残念な思い。しかし、気がつけば、ボクネンの大作をほとんど独り占めするような幸福感。ともに12畳大の大作、『大礁円環』と『節季慈風』とがむき出しのまま、向かい合わせに展示さされていたのである。画集でしか見たことがなく、実物の大きさを想像しかねていた作品が、一度に目の前に立ち現れた。

 目の前にあるのは絵である。絵のはずである。しかし、近づけば視覚いっぱいに絵は広がり果てしなく続いているように感じられる。色彩に満ちた海の中をさまざまな魚や生き物たちと戯れて泳ぎ、静止しているはずの絵の中を躍動するように泳いでいる自分がいる。反転して背中の方に目を向ければたちまち時空を超えて季節に中を空中散歩しているかのような錯覚に中にいる。いくら絵が巨大であるとは言え、実物の自然は、さらにスケールが大きい。しかし、その絵の中に入ると、本物の自然が凝縮されていて、目も眩む濃度で眼前に迫ってくるのだった。長く見ていたい。見ても見ても尽きることがない世界。しかし、膨大なエネルギーが注がれた作品から発せられる力を、長く受け止め続けるのも力がいるもので、受け止め続けるには限界があった。

 羽田空港第二ターミナルの天井から巨大な滝がぶら下がっている。日本画家、千住博氏の大作。この空港のように、『大礁円環』や『節気慈風』も、そこに行けば必ず会える、そういう居場所ができることを願っている。

 その後、浦添市美術館では、さらに強烈な大作群の中に身をたゆたえることができたが、そのときの興奮を語るのは、もうちょっと置いておこう

                (掲載作品:『節季慈風』(部分)182.0×1092.0cm 1996