投稿日時:2013年05月21日(火) 11:10
ばんばんニュース 第21号
『見える順番』と『見えない順番』
〜「作品」と「作品」の繋ぎ目を読む〜
一昨日の日曜日、5月19日。沖縄の梅雨の真っ最中。ボクネン美術館でアーティスト・トーク『順番とは』が開催されました。午後4時からの開始でしたが、もうその日はほとんどが雨状態。「これじゃ、お客さんも足が遠のくね」というスタッフのことばに、みんなはうなずくばかり。それでも70人近くの方が足を運んでくださり、ほっとするなり感謝感謝の日になりました。
さて本題の『順番とは』ですが、このモチーフは現在美術館で開催中の『「心のゆくえ」〜万象連鎖シリーズⅠ〜』とテーマをからめたもので、作品鑑賞の「ヒント」にでもなればと企画されたものです。
プログラムは第1部「万象連鎖について」。第2部が「順番の構造」という流れで進められたのですが、なんとも万象連鎖作品群の「順番」自体が不思議そのものですから、聴き役もたじたじ状態。トークショーは、どこへゆくのやら…。それでも、わかるところから少しずつ作品における「順番」を考えていきました。
たとえば、万象連鎖シリーズ作品群の「順番」を考えてみますと、みっつのパターンがあるとおもわれました。ひとつは、「見える」から「見える」という順番。この「見える」というのは、誰が見ても、この「絵」の状態が次の「絵」の状態に変わるということがわかるという「見える」です。つまり朝起きて顔を洗って、ご飯を食べて、歯を洗うという誰でもわかる「順番」です。それが絵に表れれば「見える順番」でしょう。たとえば、傘をもっている女性が次の場面では、遠くに見えて小さくなっていくというようなはっきりとわかるところです。
さて、それから2番目はというと、「見える」から「見えない」という順番になります。これは作家の「想像力」が必要な「順番」です。この「順番」は、万象連鎖シリーズの第1番目の大事なポイントでしょう。
それから第3番目は、「見えない」から「見えない」という順番。この「順番」は作品群から見ても想像のつかない摩訶不思議な世界がくりひろげられていますから、鑑賞者のみなさんもよく感じることだとおもいます。ここの第3番目の「順番」では、作家にしかない才能的「資質」が出てくるものであり、作家自身もよくわからないのかも知れません。いわば、この段階が「芸術」として立ち現れてくる表現の一番大事な「順番」ということになりそうです。
「本質を識るには、規範を識らなければならない」
この言葉は作家が、このイベントで語っていましたが、早い話がこの『順番とは』というモチーフの核心をつくものだとおもわれます。つまり作家は「見えない順番」が〈本質〉だとすると、「見える順番」は〈規範〉ということを言っているのだとおもわれます。
まとめを言ってしまいますと、作家が「見えない順番」〈本質〉を作品で懸命に表現しているのは、「見える順番」〈規範〉をより深く理解するためだったのです。
作家は鑑賞者と「見えない順番」を一緒になって、見たいのだとおもわれました。この「見えない順番」〈本質〉は、すべてのひとが共通にもつ意識であり、「地下水」の流れで通じ合っていると作家はつねづね言います。この「地下水」でのつながりを、作家は作品を通して確認したいと願っているようです。
「絵は観る人のものです」
このフレーズは作家が何度も口にしているものですが、その日も繰り返していました。作家が描いた「絵」といえども、その「絵」はいったん描かれたら、作家のもとを離れみんなの「財産」になっていくということなのでしょう。
さて作家が表現し続けている問題は、まだいろんなことを考えていかなければならないとおもいます。今回のアーティスト・トーク『順番とは』が、作家の作品の核心に少しずつ近づいてきていることを願っていますが、まだまだ先は長そうです。これをみなさんと一緒にかんがえていけたらとおもっています。また、次の機会にぜひご参加ください。(當山)