投稿日時:2011年11月20日(日) 20:03
ボクネン美術館便り~闘神~
沖縄には、タウチーオーラセー(闘鶏)と言って、2羽のオスのニワトリを戦わせる娯楽があります。最近は減ってきましたが。この闘鶏は東南アジアでは古くから行われていました。
眼がえぐれようと、脳みそが見えようが戦う事をやめない闘鶏もいるといいます。そこには戦う神が宿っているとボクネンは言います。ボクネンがその闘神を描いた作品が1998年制作の『焔(ほむら)』です。
焔とは炎という意味があり、私自身、ボクネンの作品の中で一番といってもいいくらい、この作品に心を動かされます。
一言で言うと本能に突き刺さる絵という感じでしょうか。男なら誰しも強いものに憧れると思いますが、その本能に刺さるのです。、血まみれになりながら、眼をえぐられながらも、ただひたすら燃え尽きるまで戦い抜く。その強さが伝わってきたとき身体が震えるのです。
ボクネンと闘鶏は奇妙な縁があります。浦島太郎ではありませんが、ボクネンのアトリエの近くにある浜で、ある日、戦いで傷ついた闘鶏が捨てられていました。ボクネンはそんな動物を放ってはいられません。
余談ですが、つい先日もボクネンが怪しげなカゴを持って現れました。中を見てみるとメジロの赤ちゃん。「台風で巣から落ちたメジロの赤ちゃんを拾って巣立たせる。」ボクネンはそう言っていました。
ボクネンは闘鶏を連れて帰り、飼いだします。するとある日また、浜で別の闘鶏が捨てられていました。ボクネンはまたその闘鶏も飼いだします。二度も傷ついた闘鶏を拾うなんてことはなかなか無いと思いますが。不思議とボクネンの周りには動物達が集まってくるようです。
戦いに傷つき使い物にならなくなった軍鶏は捨てられる。ボクネンがどういう思いでこの作品を彫り上げたのか分かりませんが、そんな現実を知り、この『焔』を見ていると闘鶏たちの怨念すら感じてしまいます。
「喰ったという意識があるなら喰われるということも共有していかなければならない」美術館の壁に貼られたボクネンの言葉が胸に響きます。
実は、この『焔』には闘鶏の魂と言いますか、霊魂と言いますか、ボクネン曰く一羽だけ幻想の闘鶏が描かれています。皆さんの分かりますか?
展示期間 2012年3月11日(日)まで