• 2018-01-16 (火) 15:28
  • カテゴリー:ブログ

BOKUNEN INTERVIEW

ー きょうは女性像と、その奥に潜む本性みたいなものについて聞きます。女性が描かれているボクネン作品のなかで、私が最も気になるのは『昇玉』(しょうだま、2005年)ですが、この作品を見ていると、実は以前あなたから聞いたことのある“チンジローハル”のことを思い出すんです。

作品に彼女からの影響があれば話してもらいたいんですが?

(※“チンジローハル”とは、ボクネンが少年時代に伊是名で見た夜な夜な出没する妖艶な女性のこと)

ボクネン あっはは。“チンジローハル”のことね。彼女を見たのは小学校の5、6年生の頃なんだ。ウージ畑とウージ畑の間を“チンジロー”はスローモーションで通り抜けるというかジャンプして隠れていくんだね。

それは子どもにとってはすごく恐い存在でね。昼はほとんど姿を見せない。まるで蛾が白い粉を撒き散らしながらというようにね。

“チンジローハル”はワンピースを着けていてね、白系の生地に花柄がついていたとおもう。“ハル”のはだけたワンピースからは白い内股がチラチラとくっきり見えるんだ。“チンジロー”は毛が縮れてバサバサしているという意味。とにかく彼女は島で異様な存在そのものだった。

ー そのエロス的な体験というのは、あなたの作品の女性像にいくらか影響しているのですか?

ボクネン 確かにその経験はぼくのなかに深く残っているね。例えば、『昇玉』に描かれた女の子も“ハル”と同じようにワンピースだよね。それと作品のなかで使われた配色も“チンジロー”を見た時のイメージそのものなんだ。

ー 蝶ではなく、蛾も飛んでるしね。

ボクネン そう。蛾も作品のなかに飛んでいるんだ。“チンジローハル”を見たのは、帳の下りた闇のなかでね。蛾の姿は薄紅色と強烈な赤を持っているけど、全体としては薄紅色。それに薄いグリーンが混じって、薄い色だけど鮮やかなんだね。それは夜光貝の真珠色に近いのかも知れない。

だからぼくが“チンジローハル”を描くとすると、いつのまにか『昇玉』のような配色をしてしまうんだ。

ー そうすると、“チンジロー”のような怖いけど惹かれるという体験は島では他にもいろいろあったんでしょうね。

ボクネン 確かに“チンジローハル”に限らずそういう不思議な恐怖を持ったひとは伊是名に少なくなかったね。

作品を表現するというなかで、それらの恐怖から目を逸らすということはできないね。これは“ものの真理”に結びついているかも知れないな。別の言い方をすると“生き物の本性”なんだとおもう。

これを表現するというのは一筋縄ではいかないけれど、多分みんなにそれを見せたいために穴を開けたくて作品を描いているのかも知れない。それは明らかに絵の向こう側にあるものだ。

これは“永遠の憧れ”かも知れない。憧れというのは、それを実現するということではなくてね。

ー このことは現代人が“生き物の本性”をないものとして隠しつつ生きていることと通じるものがありますね。

ボクネン そうだね。それを否定したら僕たちは、どんな“真実”にもたどり着けないだろうね。

ー なるほど。今日はどうもありがとうございました。(掲載作品『昇玉』。インタビュー 2018年1月11日)