投稿日時:2018年01月22日(月) 17:20

私は言葉。絵に会いたいな。

 このシリーズは、ボクネン美術館が版画専門誌『版藝』に季節ごとに出している広告を一足お先に紹介するものです。言わば絵に言葉を乗っけるので、作家とは別のタイトルをつける試みになります。

今回の広告は、179号(春季号)に掲載。お題の作品は『風と咲く』(2006年、45.0×47.0cm)です。作品の桜は、白さが際立っていますから、「寒緋桜」ではなく「ソメイヨシノ」でしょうね。今、ヤンバルで咲いている「緋桜」ではないと思います。

ちなみに「ソメイヨシノ」は思いっきりの良さで、さっそうと散りますから、“日本人の心”や“武士の魂”を象徴していると言われます。それに比べて「寒緋桜」はどうでしょう。南国のたゆたう時間を感じませんか。この時間の流れの違いが、二つの桜の大事な違いを表しているようにおもえます。

とくに、「寒緋桜」は桜の原種とも言われることから、せかせかとした雰囲気ではないのもかも知れません。ここに東京のひとが名護の桜を見て詠んだ短歌があります。それは、やはりゆっくりとした趣きを感じさせるものです。その歌は「国頭の 山の桜の 緋に咲きて さびしき春も 深みゆくなり」と謳われていますが、なるほど“武士の魂”ではありません。言ってみれば、沖縄の桜は急かされることのない懐の大きな“原種”という感じがしますね。

さて、上掲の作品に載せられた“白い炎”ですが、「ソメイヨシノ」のもつ繊細な美しさと潔さが感じられますよね。