投稿日時:2017年06月26日(月) 16:21

『樹娘』(きこ)。

先週の月曜日、6月19日のこと。ボクネンが秋の展示会(『紋様の祈り〜未来へのまじない〜』)のために作品を彫り始めているという話を聞いて、読谷のアトリエまで出かけてみました。

すると、すでに3点の作品(48.0×47.0cm)がモノクロ刷りを終えていて、そのなかのひとつに『樹娘』(きこ)と言う作品がありました。これはこれまでの作品イメージとは少し違っていました。何れにしても、今回彫られた3点のいずれもが、2012年の9点の娘シリーズに含まれるようなものでした。

ところで、この『樹娘』が他の娘シリーズと違うのは、娘に絡みついている〝紋様〝が〝紋様〟になる前の〝葉っぱ〟そのものということです。これまでの作品では娘たちが身にまとっているのは、すべて〝自然物〟が〝紋様化〟されていました。

このことが意味するのは、〝葉っぱ(自然物)〟自体が娘(人間)に取り付いて、一体化していることでしょう。これは「人間」と「植物」は自律的な働きをする内臓器官が構造的に同じ仕組みだと言うことを暗に示していることになります。〝紋様〟は人間の行為のなかの〝祈り〟を示すものになりますが、〝紋様〟ではない〝植物そのもの〟は器官的に人間そのものだと言うことでしょう。

〝紋様〟は〝自然物〝を創造(デフォルメ)することで、〝祈り〟のカタチを表現することになります。今回の『樹娘』は、祈りにならない前の〝自然物〝が人間の体と一体化したのです。つまり、作家はこの『樹娘』で〝祈る〟前の人間を描いていることになります。(上掲作品『迎手』2012年)