風の種。

梅雨の時期ですが、公園でウォーキングなどをしていると、ふと“小さな風”が身体にあたってきて、とてもいい気持ちにさせてくれます。おそらく、夏に向けて南からの風が吹きはじめているのでしょう。

ところで、この“小さな風”、沖縄(琉球)語ではとても素敵ないいかたをします。つまり、小さな風でゆくゆく大きくなっていくということでしょう。“サニカジ”と言います。これを直訳すると“種の風”で、“風の種”ということになります。“風の種”なんて、昔のひとたちは、なんて詩人的な言い方をするのでしょう。

ここで“種”という言葉を使っているのは、おそらく農業をやっていたからこそ、発想できたということなんでしょうね。ところで、この“サニカジ”についてはもうひとつ面白いことがあります。この“サニカジ”、いま風の順序で言えば、つまり“風の種”ですから“カジサニ”というはずですのに、わざわざひっくり返して“サニカジ”と言っているんですね。

ひっくり返し言葉は、国文学者の折口信夫というひとの本で読んだことがあるんですが、沖縄(琉球)語の特徴らしんですね。たとえば、「私は大工の太郎です」と言うところを、昔の沖縄(琉球)のひとたちは、「私は太郎という大工です」と言ってたらしいです。いまでも、沖縄では、そんなふうに言うひともいるはずです。これからして、折口さんは沖縄(琉球)語は、日本語より、古いと言っているんです。

さて、“サニカジ”に戻って、そんな風が吹いていそうな上掲の作品を紹介しましょう。ボクネンが1995年に描いた『福木の日陰』(32.0×31.0cm)です。