歌川広重の雨。

 以前に予約録画していた『広重が描いた日本の絶景』(NHK日曜美術館)を最近、やっと観ました。録画した理由は、このごろ版画で気になっていた“雨”の描き方に興味をもっていたからです。それも歌川広重は「雨の詩人」という言い方もされていますからね。もっと詳しく広重について知りたいと思っていたのです。

 広重の雨の作品と言えば、『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』(興味のある方はネット検索を)が代表作として有名ですが、ぼくの好きなのは旅人が山の斜面を急いでいく雨の光景を描いた『東海道五十三次之内 庄野白雨』(この作品もネット検索を)です。この作品は雨が右上から左下へ斜めに降っているのに対し、山の斜面は右下から左上へ坂になっていて、雨と斜面を対角状に交錯させて描いているのです。

 この作品の構図の意図は、見るものを降り出す雨の不安ばかりでなく、斜面を登っていくひとたちの不安感も描き出しています。ここで広重はこれまでの自然の悠々たる詩情豊かな風景を表現するというより、自然のなかで生きるひとびとの不安と人々自身の心のなかに潜む不安の両方をこの作品で描いているようにおもえます。広重が19〜20世紀のヨーロッパで“雨の詩人”と言われただけありますよね。

 さて、わがボクネン美術館が保蔵する雨の作品も紹介しましょう。ボクネンが1989年に描いた『雨花』(うか、91.0×91.0 cm)です。ぼくがこの作品を観て感じるのは、小学校のころ買ったもらった雨靴を履いて、わざと水たまりのなかを歩いたことです。