投稿日時:2016年02月01日(月) 15:09

ギャラリー散歩

GSAgazo

 今月2月9日より沖縄県立博物・美術館で「木梨憲武展」が始まる。

 この展示会開催時期にうまいぐあいに関連して、数週間前、テレビのドキュメンタリーで木梨憲武さんのニューヨークの個展の模様を伝える番組をみた。テレビでは木梨さんの奔放な作風も興味を引いたが、奥さんの女優である安田成美さんのディレクションというか、ときには作品について真摯な助言をするという「やわらかな態度」にも魅力を感じた。安田さん自身もデザイン畑の経験がある方らしく、その審美眼はなかなかのものであった。

 ところでこの木梨さん夫婦、7年前だったろうか。作品『桜乃花滝』(186×184cm/2008年)に東京の展示会で興味をもってくれたことを耳にしたことがある。このニュースにその当時の私は、夫婦の「芸術的感性」に大いに感心したのだが、さていまこのたび始まる「木梨憲武展」が開催されるという話を聞いて、ふと頭に浮かんだことがある。

 木梨さん夫婦は三人の子ども(確か現在、12〜19歳までの二男一女)に恵まれているらしいが、夫婦が作品を実際に目にした当時、こどもたちは6歳から12歳ということになる。まさに子育ての大変なころだ。つまり、この時期に木梨さん夫婦は『桜乃花滝』に出会ったたことになる。これは奥さんの成美さんの関心度がとくに強かったのではないかというのが、私の推論である。つまりこのことに、私はとても身に沁みて感じることがあるのだ。

 実は、私はその当時から『桜乃花滝』には“ゆらぎ”というテーマが表現されていることをしつこく書いた。この作品には人間が誕生するときの胎児と母胎の心の“目のゆらぎ”が感じられると書いたのである。つまりこの『桜乃花滝』には、母と子が一心同体である映像イメージが埋め込まれているのではないかとかんがえたのである。ここに、私は安田成美さんが子育て真っ最中にこの『桜乃花滝』に執着したひとつの理由をかつてにみつけたおもいなのである。もちろん絵についての言葉(批評)は、いつも“あとづけ”に過ぎないから言説に留まることは免れられないのであるが…。

 それにしても安田成美さんが実際に気づかせてくれるヒントになった『桜乃花滝』に縫い込まれているとおもわれる「母と子」の一心同体のイメージ化は、私個人としては大いに勉強させられ、しかも感動しているのである。