投稿日時:2015年09月14日(月) 17:37

おしゃべりQ館長 その29

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 一昨日の9月12日、土曜日。午後4時半より久々にアーティスト・トークが開催されました。タイトルを『絵の舟に乗って』と銘打ち、「絵の力」を考えてみようというのがテーマでした。会場には早々と50名余りのみなさんが集まっていただき、なにやらこれまでと違う雰囲気に興味津々。というのもステージにはギターが置かれ、横にはボクネン作品がイーゼルに掛けられているのです。

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 そこで、今回のお客さんは宗教人類学者の佐藤壮広さん(44歳)。佐藤さんは長年、沖縄のシャーマンの研究で多くの論文や共編著の著作があります。そこで、第1部はボクネンの「降りてくる絵」「絵を描くには順番がある」という芸術家の不思議な言葉を切り口に、佐藤さんと画家との対話を始めてもらいました。そして第2部では、『絵の舟に乗って』というタイトルにもとづいて作家のみならず会場のみなさんも、どんな想像の世界へ行けるかということを実践してみたのです。作家も鑑賞者も一緒に「ひとつの絵」を観ることで、それぞれに自分だけの物語の世界に行ってみようということになったのです。

 さて、前半の第1部は佐藤さんとボクネンが「絵の力」をテーマに対談。それこそ絵の降りてくる話、絵を頂くセジ(霊力)の話、画家が描いた絵をたくさんのひとに届ける話と続き、会場も盛り上がって予定時間の45分もあっと言う間に過ぎてしまいました。ちなみに対談最後の方では、ボクネンが「絵」は「死」をも喚起させる力のあるものという熱い話に、会場のみなさんもじっと聴き入っていました。

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 後半の第2部は、佐藤さんが自ら主宰する交流ワープショップ「歌の人間学」の特別授業をしてもらい、会場のみなさんにもその「表現を鍛える教育実践」に参加したいただきました。会場横には『眼鏡木(ガンチョーギー)の真南風』を設置し、おもいおもいにその絵のイメージをアンケート用紙に書いてもらったのです。そのメモをヒントに佐藤さんがギターで即興の歌にしたところで、会場のみなさんにも笑顔がほころびました。アンケートに書かれたみなさんのユニークなイメージに、佐藤さんの歌も次第に完成度を増して『眼鏡木(ガンチョーギー)の真南風』も思わぬところで、いくつもの素敵な物語を繰り広げたのです。ボクネンも自分の絵がたくさんのひとのイメージを喚起し、しかも素敵なメロディーに乗って会場に流れたとあって、感激のしっぱなしでした。

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 今回の催しは佐藤さんの「歌の人間学」とボクネンの「絵は観るひとのもの」という思想がうまく融合し調和がとれたかたちになり、多くの感動が生まれたようにおもいます。言わば『眼鏡木(ガンチョーギー)の真南風』という一枚の作品を通して作家と多くの参加者がイメージの交流をしたことになり、美術館の役割がひとつ広がった感じがしました。

 まさに、たくさんのひとの心を繋ぐ「絵の力」を共有することになったアーティスト・トークでした。