万想連鎖 33

風の島からファサード2

万想連鎖33 この半年
那和 慎二(大阪通信員)
 
 半年間と言えば、身体の細胞はほとんど入れ替わってしまい、物質としては別物になってしまうほどの時間。ぼーっとしていたわけではないが、トイレ美術館のカレンダーは次々とめくられて、もう残すところ2枚だ。今年も、もう年末が見えてきた。想いを巡らせることはあったが、言葉に起こさないまま、気が付いたら半年も経っていた。

 緑が美しい季節だったから、様々な場所を訪れて、そこに緑門が現れるたびに、BOKUNENの世界が立ち上がる。もっとも、そのイメージを留めるのは、せいぜい写真を撮るしか芸がない。眼から脳に刻み込む記憶が鮮やかであれば写真もいらないが、その記憶が明け方に見る夢のように、まるで当てにならない。記憶もろとも感動まで消えやすくなっている。

 夏は、こちらの百貨店の催事場で沖縄物産展が開かれる季節。今年はついに沖縄に行けない年になりそうで、懐かしい沖縄の匂いを求めて、あちらこちらと4回も沖縄物産展に足を運んでしまった。何が欲しい、何が食べたいわけではないので、三線の音やサータアンダギーやチキアギを揚げる匂い、泡盛古酒やサンニンの香りが混ざり合う会場の雰囲気に浸って、渇きを癒したら会場を後にした。ボクネン柄のかりゆしを着て行ったが、残念ながら、同好の人に会うことはなかった。

 今秋は、ボクネン作品「さきよだの神歌」をイメージに使う熊本での沖縄音楽イベント「琉球の風」が来春に延期された。東京・大阪で開催される琉球フェスティバルとの日程が調整できなかったようだが、幸い、今は大阪在住の身。妻とともに6時間に及ぶ沖縄音楽を堪能した。とりを務めたりんけんバンドが盛り上げるだけ盛り上げた上に、最後は出演者全員が集合したステージに観客が押し寄せて、もちろん私たちもその中に混じって、お決まりの唐船ドーイで最高潮に達した。妻はどさくさ紛れに新良幸人のあの頭に手を伸ばして撫でた。沖縄と遠く離れていても、沖縄出身のアーティストたちが運んできた沖縄の風の中で、熱く温かく幸せな時間を過ごすことができた。

 ときどき自宅から歩いて行く日本一長い天神橋筋商店街。そこにも、沖縄物産の店が2軒ある。ふらりと寄ったその店で、「モモトVol.19名嘉睦稔 技と術」をたまたま手にすることができた。ボクネン美術館からは新しいボクネン展の葉書が届いた。いつでもオフィシャルサイトへ行けば空白を埋めることもできる。そうそう、忘れないうちに、来年のカレンダーを注文するとしよう。おっと、すでにサイン入り予約は受け付け終了となっていたが、欲張ることはない。物質として入れ替わったこの身体にも、朧ながらもBOKUNENの記憶は刻まれ続け、日々積っていく。