投稿日時:2014年09月16日(火) 17:05

ばんばんニュース 第12号

版版ニュース2

 昨日の15日、敬老の日なのになぜか「リトルジャノス」は女子大生でいっぱい。彼女たちの目当ては、ボクネン美術館の見学後、ボクネンに質問をするために集結したのだ。そう、れっきとした「授業」なのである。彼女たちは東京五反田にある清泉女子大のインテレクチアルガールたち。専攻も言語文化だ。総勢21名とあって引率の佐藤武壮先生も沖縄の太陽のもと汗をふきふきのコーディネイト。ちなみにこのプチ講演会みたいな催しは美術館でも初めて。ギャラリースタッフもリズムがいまいちつかめず少しだけなりゆきまかせ。しかしである。このミニ授業、館長の独断なのだが、ぼくが30年以上のボクネンとの付き合いのなかで最高の「講演会」だったとおもう。ほかにシンポジウムやトークイベントなどもあったのだが、この清泉女子大の「純粋さ」にかなわなかった。
 
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 その理由を次にあげよう。確かに最初は20歳から21歳までの「東京ガール」たちだから、それなりに「美術はわからない」に終始して授業は閉会となるはずだった。ところがである。ボクネンのいつもの20分ほどの遅刻で「リトルジャノス」からさっそうと現れると、まず「拍手」の渦。さて、佐藤先生が美術館で見学した作品の感想を聴くのだが、みんな借りてきた猫のよう。しかたなく、ボクネンが珊瑚のこと、沖縄の文化のことなどを少し始めるとさすがに、ひとりの生徒が質問した。ところが、この学生、感激した「大礁円環」のことを話し始めると、感極まって泣き出したのであ。これにはボクネンもかすかにもらい泣き。
 この生徒によると、最初にボクネンを目にしたとき、作品「大礁円環」の美しいい海に景色とだぶって感激したらしいのだ。そして、2番目の学生が質問するとその内容にみながシーン…。「最近おばぁちゃんの死を考えたりして、じぶんも死を受け入れるのに悩んでいる」という。この学生もなぜか話しながら涙が…。
 この質問にはボクネンが「野辺の送り」の経験談や、沖縄のひとたちはかつて死んで3年後には腐れた肉をとり払い洗骨をする習慣があったことなどの話をすると、いつのまにか質問者の涙も止まり、そのほかの学生も沈黙。
 最後に一等最初に質問した学生が「美しい海もわかりますが、どうして汚い海は欠かないのですか?」という豪速球の質問に、ボクネンも苦笑。ボクネンが自分はテーマにそった描きかたはなぜかできない。頭に降りてくる画想の順番にそってしか描けないというと、みんな静かに頷いた。
 結局、予定の90分を越えたなんだか忘れがたい授業になったよう。佐藤先生もかなり満足げで、ボクネンもスタッフもほっと胸をなでおろした。授業のあとは、美術館で記念撮影。そしていつのまにか、授業最初の「借りてきた猫」だったみんなは「笑顔満開の猫」になっていた。
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